ヒカルの碁 マーチでGO18(愛の参加)
マーチでGO18

「カラオケ?」
「そう、行こうぜ。みんなで」
 緒方の部屋の幽霊事件から、久々の集まりだ。だが、今回はカラオケである。
「割引チケット貰ったんだ」
 和谷は一枚の紙をひらひらとさせる。
「一時間、無料になる券なんだ」

 そんなわけで、今回はカラオケ。
 メンバーは幽霊事件と同じ顔。
「進藤君。今日は、俺におんちな幽霊ついてない?」
 芦原は首を捻り、自分の背中をさわさわと撫でる。
「うん、今日は誰もいないよ」

 良かった
 とは、みんなの心の声だ。


 一番、和谷が歌います〜。
「おお、旨い〜」
「和谷って旨いなあ」
 にひひと、和谷がVサインを出す。

 二番、塔矢が歌います。
「・・・微妙だな・・・」
「うん、微妙・・・外れてはないんだけど・・・すげえ、高い声だな」

 三番、進藤が歌います!
「あれ?以外と・・・下手なんだ」
「て、言うより歌の選曲の問題だろ?」
「うん。次ぎに期待だな」

 四番!伊角です。
「渋いなあ」
「演歌の王道だもんな」

 五番。冴気!歌います。
「あ、やっぱり旨いや」
「むむ、歌い込んでるな。誰とだ」

 六番。芦原の歌で〜す。
「はあ、旨いんだけど、何で、アニメなんだ?」
「しかも、セーラームーンの振り付き?」
「マニアなんだ・・・」

 では、七番白川。
「へえ、流石、白川先生」
「・・・でも、何で、ラピュタ?しかも・・・このキー普通だぜ」
「・・・・・・・・」

 八番、緒方。
「おお、旨い。流石、緒方先生」
「でも、結構、古い曲だよな」
「青春の曲かあ」「そうだな」

 そんなこんなの批評付きカラオケ。
 だが、流石、勝負師連中。人の批評など誰も聞いちゃいない。
 勝手に歌いたい放題だ。

「あれ?コレ誰?」
「ああ、ユーミンの春よ、来いか。朝の連ドラの主題歌だな」
 歌っているのは、芦原だ。
 歌詞を読んでいたヒカルの顔が奇妙に歪む。

 まぶた閉じれば・・・夢をくれし・・・眼差しが・・・
 懐かしき声がする・・・

「おい、ヒカル。どうした?」
 緒方の声でヒカルは自分が泣いている事に気がついた。
「・・・芦原の歌だぞ。そんなに感動か?」
 ヒカルはごしごしと目をこする。
「うん、この歌詞が・・・結局、何時までも待っているんだね。恋人は帰って来たのかな?ちゃんと思いは通じたのかな?」
「ドラマじゃ、一応な。結婚してるはずだ」
「そう、幸せになれたんだ」
「まあな」
 白川はヒカルの様子に気がついたが、他は誰も気がつかなかったようだ。
 テーブルの下から、そっとハンカチをヒカルに握らせると、白川はにこりと笑った。


「え?これ何?」「シャンソン?」
「誰が入れたの?」
 緒方はがしりとマイクを取ると、ヒカルに向かって歌い始めた。
「ほう、愛の賛歌ですか。エディット・ピアフですね。カラオケって、面白い物も入っているんですね」
 白川の言葉に、冴木とアキラが顔を赤く染める。知っているらしい。
「外国語か解らないよ」
 和谷の言葉に、白川が、
「うちに日本語の歌詞がありますよ。今度見せますね」
 後日、歌詞を見た和谷と伊角は絶句した。


「緒方先生・・・今日、何て歌ってたの?」
 ヒカルの問いに、緒方はCDを見せる。
「エディット・ピアフ?」
「そう、今日、歌ったのは愛の賛歌だ」
 ヒカルは歌詞カードを広げると、爆笑した。涙まで流している。
「ありがとう。緒方先生。ああ、おかしい。嬉しいよ」
「そうか、良かったな。俺は結構、本気なんだがな」
「俺も本気だよ。ありがとうね。そうだ、もう一度、歌ってくれない?」
 愛の賛歌を。


 ユーミンの春よ来いは、サイヒカの歌詞のようです。
 エディット・ピアフの愛の賛歌・・・歌詞は検索ででも出して下さい。不親切ですが、全部書き切れません。
「大した事じゃない、貴方が愛してくれるなら〜」世界が滅びても、犯罪しても私は平気と言う意味が書かれてます。
 感動なんですけど、ヒカルに歌った緒方は、ちょっとお笑いですね。臭かったかな?
ヒカルの碁目次 1719