ヒカルの碁 マーチでGO15(どうせいちゅううんじゃ)
マーチでGO15

    ぴんと来た貴方!関西人ですね。

「進藤、最近、緒方さんと何で何時も一緒に来るんだ?」
 和谷の言葉に、ヒカルはにこにこと笑う。
「うん、俺達、同棲中なんだ」
 は、今、何を聞いたろう?
 同棲中?俺の耳は変になったのか、それともこれは夢か?
「なあ、進藤、もう一度言って」
「あ?聞こえなかったの?同棲中だよ」
 カーンと和谷の頭の中で、ホームランボールが炸裂した。
 打球はぐんぐん、ぐんぐん伸びてます。大きい、これは大きい!入ったー!
 ホームラン!!!
 あまりの言葉に、現実逃避してしまった。
 は、駄目じゃん。
「何で、同棲なんてしてるんだ?」
 とにかく、理由だ。理由。
「ええと、俺の父さんがね、海外に出張なんだ。3ヶ月。イギリス。あっちじゃ、こう言う親の赴任には、家族が全員で行くらしいね。でも、俺、仕事あるから。母さんだけ一緒に行ったんだ。でも、俺、一人で家事とか出来ないから困ってたら、緒方先生が預かってくれるって。父さんも母さんも緒方先生なら安心だって」
 進藤のおとうさんとおかあさん。貴方方は間違っています。
 和谷は心の中で呟いた。

 緒方 精次は確かに、タイトルホルダーで大人です。ですが、進藤には邪な思いを抱いている人物なのですよ。

 和谷の思考は確かに正しいのだが、緒方とヒカルの日常は、
 プロレスをする。飯を喰う。一緒に寝る。徹夜碁で遊ぶ。衛星放送で深夜番組を見る。
 散歩をする。夜明けの海を見る(何故か)等である。ほっぺチュウはあるらしいが。

「でも、同棲って楽しいよ」
 上の事を踏まえての、ヒカルの感想なのだが、和谷は聞いちゃいない。
「うう、お前、ついに嫁に行ってしまったんだな。まだ、こんなに若いのに・・・」
 はあ?ヒカルの頭ではなくても???が飛ぶだろう。
「嫁?俺、結婚なんてしてないぜ。もう、和谷は変なんだから」
「安心しろ。喧嘩してもこの和谷兄ちゃんが相談に乗ってあげるからな。辛くなったら、何時でも来い。俺の部屋にな」
 がしりと捕まれた肩に驚いて、頷いてしまったヒカルだが、今だに疑問符が脳内を飛び回っている。


「緒方先生〜!帰るの?」
 ととっとヒカルが緒方の元に寄るのを、周りは怖い物見たさで、そっとあちこちから覗く。
「ああ、お前も帰るのか?」
 頷くヒカルを見て、緒方が手を差し出すと、ヒカルはそれを握る。
 仲良く、手を握り合ったまま消える二人を、蒼白な沢山の視線が追いかけていた。
「あれ?進藤君はもう帰ったの?」
 呑気な声の主に、全員が注目する。
「芦原さん!進藤が同棲なんですか?」
「同性って、そりゃあ、男同士だから」
「その同性じゃないです!緒方先生と暮らしてるって!緒方先生と同棲だって!」
 必死の形相に、芦原がふーと深い溜息を漏らす。
「そうなんだ。緒方さんは先日、ついに進藤君にプロポーズしたらしくてね。俺も止めておけと思うんだけど。進藤君は物好きだから・・・」
 言って内心では、ぺろりと舌を出している。
 からかっているのだ。
「進藤君、おめでただから式は出来ないんだよ」
 おめでたって、もう・・・子供が出来たんですか?!て、事は・・・やっちゃった仲なんですね。(ここのヒカルは男です)
 和谷はあまりの妄想に、ふらふらぁと漂って行ってしまった。
「芦原さん、和谷君・・・誤解してますよ」
 芦原の後から、アキラが無表情で問いかける。
「ん?いいんじゃない?明日になったら、気がつくよ」
「いや、多分、当面気が付かないかも・・・それにしても、緒方さんは人騒がせですよね。同居を同棲って進藤に教えるんだから」
「え!同棲でしょ?だって、あの二人、熟年夫婦みたいに熱々じゃない?」
「まあ、そうですね」
 多分、進藤の両親が帰って来ても、変わらずに一緒に住んでいるでしょうから。
『和谷君、妙な兄弟子でごめんね。でも、進藤は幸せらしいから』
 アキラはそっと呟いた。


 題名の通りです。同棲中 んじゃあ です。和谷君の叫びです。
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