| ヒカルの碁 | いろは〜冥土の土産 |
| 冥土の土産 緒方とヒカルは白川の誘いで、スキーが出来ると言う旅館にやって来ている。 バイキングの旅館の朝ご飯を食べながら、緒方はため息をついた。 『じじいが止まってるとはな』 ちきしょう!白川の野郎。憶えてろ! 「おい、白川。桑原の爺も呼んだなんて聞いてないぞ」 緒方の言葉に白川は、相変わらずにこりとしている。 「私は呼んでませんが、誰が呼んだのでしょうね。まあ、棋院にスケジュールは渡してありますから、それを御覧になったのかもしれませんね」 私の責任ではありませんと、でかでかと顔に書いてある。 むかつく。むかつく。 緒方は不機嫌だ。 【・・・が急性の心臓発作で死亡しました。桑原氏は、永世名人の称号を・・・その他・・・】 つけっぱなしの大きなテレビから、ニュースが流れてくる。 【桑原氏の死に、囲碁界は多きな衝撃を・・・・】 緒方が顔を強ばらせる。 「おい、何を言ってるんだ?じいさんはここに泊まってるんだろ?一体、何言ってるんだ?」 なあ、おい、白川。 慌てる緒方に、白川は首を傾げる。 「本当に、桑原先生だったんですか?別人では?私は会ってないですよ」 「・・・爺の弟だと言ってたが・・・。だが・・・」 「僕も会ってませんよ?」 アキラが首を傾げる。他の皆もだ。 「誰も会ってない?あ、いや、進藤!お前は会ってるだろ?一緒に風呂に行っただろ?」 テーブルの端でみそ汁を啜ってるヒカルに緒方が詰め寄る。 「うん、一緒にお風呂入ったよ」 「ほら、見ろ。爺はここに来てたんだ」 が、次ぎの言葉で、その場の者は凍り付く。白川でさえ、とっさには言葉が返せなかった。 「でも、影がなかったけどね」 はあ、なんですとお〜!! 「うん、だから、生霊って言うのかな?ああ言うの」 ヒカルはずずっとさらにみそ汁を流し込む。 昨晩、ヒカルは桑原と一緒に、風呂に入った。 「すまんな。進藤。わしの方がお前の大切な人に先に会うな」 「しょうがないよ、それは。俺もその内に時間が来たら、会えるもの」 湯煙で桑原の顔はヒカルには霞んでいる。 「桑原のじいちゃん、俺ね、俺に続く人を、碁を好きな人をもっと育てて見たいよ。ねえ、じいちゃん。俺、緒方先生と一緒に、もっともっと沢山の人が碁を好きになるように頑張ってみたいんだ」 「そうか」 あやつもこんな弟子を持って幸せだな。 「うん、だから、まだまだあいつには会えないよ。今度あいつに会ったら、沢山の人に碁を教えたって自慢するんだ」 「そうか。良い冥土の土産が出来たよ。伝えておこう。最後に緒方君とも打てたしな」 ふぉふぉふぉ。 「逝くの?」 「ああ、又のう」 「桑原先生は最後に師匠と打ちたかったんだよ。だから、ここまで来たんだ」 緒方は複雑な表情の後に呟いた。 「やっぱり妖怪だったか・・・あの爺は」 |
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