ヒカルの碁 いろは〜さわやかさん
さわやかさん

 芦原 弘幸と白川 道夫は、人当たりの良さでは一二を争う御仁だ。
 そして、それに進藤 ヒカルが加われば、春の日だまりを感じさせる。
 無敵の集団である。

 ただ、その春は花冷えする寒さを伴っている事・・・もある。
 ようは、スマイル0円ではないと言う事だ。
 スマイルは0円から〜。プロは笑顔も大切だ。

 そんな笑顔などいらないと言うのが、ヒカルの師匠の緒方である。
 まあ、緒方の場合、笑ってると胡散臭いと思われるのだが。
 あの笑みの後には、どうも人を小馬鹿にした思惑がありそうに思う。と言うのが、一般的な意見で通っている。
 そのおかげで、緒方もあえて、スマイルを振りまこうとは思わないので、助かる事は助かるのだ。

「くそ、あの餓鬼、何処に張ったんだ?」
 緒方は小さく吐き捨てる。
 緒方が探している物。それは、アキラがプリントアウトした緒方の写真だ。
 だが、ただの写真ではない。超有名人との2ショットだ。
 しかあし、これが人なら緒方は慌てなかっただろう。有名人にファンだと言われて嬉しく思わない程、緒方は達観していない。
 そうだ。人なら・・・。
 緒方が2ショットを撮った人物は人ではない。
 だが、子供から大人まで知る、日本一有名と言っても過言ではない。
 その青い丸いボディは、巷に山ほど溢れているのだ。

 そう、超有名なネコ型ロボットだ。

 スーパーでその2ショットを撮ってしまった緒方だが、どう言うわけか、ヒカル経由でアキラの元にそれがたどり着いた。
 喜んだアキラは、そのまま何処かに張り出したようだ。
 現在、それを捜索中な緒方だが、一向に見当たらない。

 編集部、対局室、資料室、掲示板。

 およそ人が集まるであろう場所は、全て探したのだが、見つからない。
 しかし、その間にも、緒方を見てにこりと笑う輩がいる。
 アレを見たのだろう。

「ちくしょう、何処だあ?」

 もう一度、上から攻めるか。
 そうだ、自動販売機の横は見てなかった。あそこか?
 確信を持って向かうのだが、
「ないか・・・」
 ちくしょう。このままでは、棋院中がアレを知ってしまうじゃないか?!

 緒方と○ラ○モンの2ショット。

 珍しく、笑顔が胡散臭くないのだ。本人はその事を知るよしもないが。
 あまりに驚いたので、構える暇が無かったため、素の緒方が出てしまったのだ。



「あれ、これ、凄いですね」
 白川が写真の前で、しげしげと感心の言葉を吐く。
「素の緒方さんですよ」
「あ、白川先生、何を見てるんです?」
 覗いた瞬間、芦原は爆笑をする前に、咽せた。
 ひいひい苦しい・・・。
 あああ〜。これ、何ですかあ?
「○ラ○モンと緒方さんの2ショットですね。良く撮れてます」
「何で、こんな写真があるんでしょう?」
「塔矢君が張ったんだとか」
 白川の言葉に、ますます芦原は疑問が湧く。何で、アキラが緒方のこんな写真を持っているんだ?
「ああ、それはですね。和谷君が・・・」
 これこれしかじか。
 です。
「て、言う事は、この中身は?」
「そう、彼の一番弟子ですよ」

 うふふ・・・。
 あはは・・・。
「「良いですね」」
「ところで、しないんですか?」
「ああ、忘れてました。ちょっと待ってて下さいね。後で一緒にアキラを捕まえに行きましょう」


 アキラが写真を貼りだした場所は、誰もが利用する場所だ。本日の緒方はまだ入ってないが。


「あら、緒方先生だわ。まあ、可愛い」
「きゃあ、良いわ〜」
「・・・あはは」
 アキラは女子トイレにも、例の写真を貼りだしたらしい。
 まあ、あのおかっぱ頭では、入っても違和感はなかろう。きっと堂々と入ったに決まっている。
 それにもし咎められても、本日のアキラは良いネタを持っている。


「ちきしょう、何処だ?」
 緒方はまだ探していた。感の悪い男である。


 その頃、さっぱりとした白川と芦原は、写真に注意書きを書いていた。


「棋院一のさわやかさん」と。
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